コラム

小売業が行う顧客満足度調査

現在、ビッグデータという言葉は当たり前のように使われるようになりました。ネット販売を行う大手のAmazonや楽天では、消費者の購買・閲覧履歴等を活用しておすすめ表示をするなど、消費促進を図る企業戦略の上で情報は重要なファクターとなっています。また、中小企業においてもSNSやそれを通じたキャンペーンの活用により、届けたい相手へ効果的に販売宣伝を行うことも可能になりました。その反面、既存の販売戦略からの脱却に苦しみ、消費者への販売の前段階としてセールや商品自体を知ってもらうことに躓いてしまっている企業も決して少なくはありません、企業間による情報活用の在り方は大きな差を生んでしまっている状況にあります。

 

また、消費者側においてはスマートフォンの登場により、即座に商品の情報や値段の相場を知ることができるようになりました。そのため、消費の仕方は大きく二極化されつつあります。

 

以前は、新聞折り込みチラシや店舗へ直接行くことによってのみ商品の情報を得られたため、売り手側が情報をコントロールできた時代もありました。しかし、今は消費者側も情報を自ら獲得し、シビアに見比べることが可能です。そのため、必要とはいえこだわりのないものを購入する際にはより廉価な商品を購入しようとします。その結果、店舗では商品の実物を確認するだけで、一番安いネット販売サイトから購入するという現象も起きています。

 

一方、上記のようにより廉価なものを求める志向性とは反対に、自らの趣味に沿ったものへは金額が高くてもその商品の価値を重視して消費者側が積極的に購入を進め、商品が入るとあっという間に売り切れてしまうことも見られます。

 

このように、販売促進を行うためには、自らの商品の価値と消費者の動向をより正確につかむ必要があります。そのためにはビッグデータ等の集まる情報の他に、そこでは収集しきれない消費者の生の声を、顧客満足度調査から得ることが重要となってくるでしょう。

 

以下では、顧客満足度調査を行うことが何故重要なのか、そしてその活用事例について言及していきます。

1. 小売業が顧客満足度を把握する重要性

(1)販売戦略の仮説を立て、戦略化する道筋

(2)顧客がそのお店に求めているものは何か

2. 顧客満足度調査を行った小売業の事例

(1)地方茶産地に立地する日本茶小売店A社の事例

(2)商店街に立地する書店B社の事例

3. 顧客満足度調査により価値を見つける

1. 小売業が顧客満足度を把握する重要性

(1)販売戦略の仮説を立て、戦略化する道筋

販売促進を進めるために消費者へのアプローチを行う必要がありますが、そのために必要な材料をしっかり揃えた上で練られたものなのかどうかは、その後の業績に少なからず影響を与えることになるでしょう。新たな発想をするにしても、その土台となるのは顧客の需要をしっかり分析することです。

 

まずは顧客満足度調査を実施する前に目的を明確化します。

① SNSを活用してお店の認知度向上のための施策に取り組みたい

② 現商品の改良、または新たな商品を投入し、売上の拡大を目指したい

③ 顧客が来店時どういうところに満足度を得るのか把握し、リピーターとなる固定客化を図りたい

このように、目的をはっきりとさせた上で、仮説を立てます。例えば1つ目のものでしたらどの年齢層をターゲットとし、そのためにどのSNSに特に注力するべきかを定める必要があります。そして、仮説が正しいかどうか、顧客満足度調査を実施することにより検証していきます。結果として得られた情報を分析し、新たな仮説を立てることがその後の販売戦略となっていきます。

(2)顧客がそのお店に求めているものは何か

顧客満足度の重要性が注視されるようになってきた背景として、品質の良さや価格の値ごろ感だけで顧客に訴求することが、売上につながりにくくなっていることが考えられます。

 

情報や技術の発展により、より廉価なものが品質よく購入できるようになってきています。そのため、しっかりと顧客の求めるものを提示出来なければ客離れを招きかねません。「~を買うならここ」と思われる存在になれているのかどうかを調査によって深堀し、企業として打ち出したいイメージと顧客が持つイメージの対比を行うことで効果的なアプローチを模索し、顧客にとってしっかりとマッチした価値を提供することが強く求められています。

2. 顧客満足度調査を行った小売業の事例

(1)茶葉の産地に立地する日本茶小売店A社の事例

日本茶産地に立地するA社は地元で採れる茶葉を中心に、高級感のあるものから安く手軽に購入しやすいものまで幅広く製品を取り扱っています。販売網としては自社店舗に加えて、地域イベントなどの企画販売、通信販売が挙げられます。

 

しかし、販売量は伸び悩み、時代の流れに乗り遅れないようにと立ち上げた通販の自主サイトもアクセスはあるものの売上への貢献はコストに対して見合わないものでした。そのような状況下で顧客満足度調査を行い、通販サイトでの収益アップを図ることにしました。

 

調査結果からは、既存顧客は近県のひとが多く、送料を負担してまで通販サイトから買うよりは実店舗に直接行って購入したいという意見が多く集まりました。その理由として、送料無料になるための金額を越すためにはたくさん茶葉を買わねばならず、そこまでの消費は出来ないというものがほとんどでした。

 

そこでA社は、茶葉を使った菓子類や、海苔、ふりかけなど消費のしやすいものをラインナップに加え、送料無料になりながら茶葉の購入する量を各家庭の環境に合わせて調整しやすいように工夫しました。また、定期的に期間限定商品などを打ち出し、サイトへのアクセス頻度を高めるようにしました。

 

その結果、購入する顧客のエリアは拡大し、全国各地からの注文が増えました。地元の顧客も状況に合わせて通販サイトも活用するようになり、サイトで見た新規製品を実店舗で試飲して購入する、という流れも生まれ、通販サイトは売上に大きく寄与する武器へと変わっていきました。

(2)商店街に立地する書店B社の事例

都市近郊に位置する商店街にある書店B社は、長年商店街のなかで唯一の書籍を購入できる場所として住民に愛されてきました。しかし、近年ではスマートフォンやタブレットでの購読、また本を買うのもネットを通じてという方法が主流になりつつあり、業績の悪化に苦しんでいました。

 

B社はどうにか地元住民の方に書店で購入してもらう機会を増やすべく顧客満足度調査を実施しました。調査対象には購入時にポイントを付与するカードを登録してもらっている方を選び、郵送により行いました。また、アンケート結果を送り返してくれた方には、後日図書カードを謝礼として渡すようにしました。

 

結果としては、20~40代を中心にやはりネットでの購入へとシフトしている様子が伺えました。一番の理由として挙げられたのは欲しいものがないことが多く、その後ネットや大手書店へ行かねばならないのが二度手間になるということでした。商店街の一角にある建物であるため置ける書籍数にはどうしても限界があり、それは大きな悩みでもありました。 しかし、調査によるFA(自由回答)データのなかには書店でオススメのポップがついた本を買うことに価値を見出している顧客も少なからず存在していました。

 

この調査の結果を踏まえて、B社は会員用のHPを立ち上げました。会員メニューとして希望する本をリクエストして書店で購入できるようなサービスを開始しました。クレジットでも書店で現金での購入でもどちらでも可能なようにし、HP内では各ジャンル毎の店員オススメ本トップ5や新刊案内などのページを充実させたことにより、複数冊の購入をする顧客が増え、売上にも大きく貢献するようになりました。

3.顧客満足度調査により価値を見つける

上記事例のように、顧客の欲求や不満を顧客満足度調査から見つけ出し、その改善を行うことが重要です。そうして作り出された新しいサービスは、消費者側にとっては大きな付加価値として映り、リピーターや口コミによる新規顧客獲得へとつながっていくでしょう。また、調査によって現行サービスの改善も図れれば、既存の顧客を手放さないことにつながり、業績を維持していく大きな手助けともなるはずです。

 

新たな価値は、往々にして目の前にあるものの中に潜んでいます。それを見つけ出す作業は、変化を求められ続ける小売業にとっては欠かせないものであるでしょう。