コラム

「顧客満足度はなぜ“甘口”になるのか──満足度調査の落とし穴」

BtoB調査を電話で行うメリット

 

顧客満足度調査を行うと、なぜか「高めのスコア」が並ぶ――。経験則として「顧客満足度は甘口になりがち」と感じたことはないでしょうか。アンケート結果では高評価が目立つのに、実際にはクレームや離反が減らない。そんな矛盾は、調査手法のバイアスや回答者心理などが原因で起こります。

 

今月のコラムでは、「本音の声が見えにくくなる理由」を中心に、甘口評価に潜む落とし穴を解説します。さらに、データの精度を高めるための具体的な工夫や、企業が実務で活用する際のポイントも取り上げます。顧客のリアルな声を逃さないための知見を、ぜひ最後までご覧ください。

 

「甘口」評価が起こりやすい主な理由

社会的望ましさバイアス

回答者は他者からの印象を気にして、「批判的な意見を言いにくい」という心理が働くことがあります。たとえば面接方式で行う場合、回答者は調査員と対面しながらインタビューを受けることになるので、回答者は調査員に悪い印象を与えたくないために、実際よりも良い評価をしがちです。このようなバイアスは対話だけで行う電話調査ならば、対面方式よりも軽減され、調査員を介さないインターネット調査ならばその影響は更に軽減されます。その他のバイアスとして、たとえば企業やブランドへの忠誠心が強い顧客ほど、「不満点があってもあえて言わない」というケースも少なくありません。結果として集計されたスコアは、実態より甘めに出やすくなります。

 

非回答バイアス

基本的に、満足度調査は不満が強い層が回答を敬遠したり、逆に非常に満足しているファン層だけが積極的に応じたりと、集まる声に偏りが生じやすい傾向があります。不満の声や貴重な意見が幅広く得られるように、質問票の設計や調査モードの選択にも配慮が必要となります。

 

質問票や調査モードによる影響

質問の文言が誘導的であったり、ポジティブな選択肢が多かったりすると、回答が甘口に偏る可能性があります。例えば、「弊社の素晴らしいサービスに満足いただけましたか?」という聞き方は、無意識に好意的な回答を促してしまいがちです。質問文は、回答がどちらか一方に偏ることない中立な表現となるよう心がけましょう。また、インターネット調査だと正直な意見を出しやすい反面、自発的に回答する熱心な層だけが集まるなど、別の形で偏りが生じやすくなるので注意が必要です。

 

「本音」を捉えるためのデータ精度向上策

回答者の代表性を確保する

「どの顧客に回答を依頼するか」は調査の命運を握るポイントです。母集団をしっかり定義し、年代や地域、購買頻度などを考慮した層化抽出など、できるだけ偏りなくサンプルを選びます。また、調査の目的を明確に伝えることや、依頼する方法を工夫したり、時間や場所の設定で回答者の都合を考慮したりすることで回答率を高め、「批判的な人や中間層も回答する」環境を作ることが大切です。

 

質問設計・調査方法の最適化

質問は明確かつ中立的な表現を心がけます。「ダブルバーレル質問(価格と品質を一度に聞くなど)」は避け、1つの論点に絞った設問を設計しましょう。回答尺度も「非常に満足~非常に不満」など肯定・否定をバランス良く設定し、必要に応じて中立選択肢を含めます。対面や電話の場合は、調査員の言い回しを統一し、表情や反応で回答を誘導しないよう注意が必要です。

 

定性調査との組み合わせ

数値データだけでは理由や背景を十分に解明できません。満足度スコアが高いのにリピート率が低い場合、何が原因か? こうした疑問には、インタビューや自由記述の分析が有効です。「なぜその評価をしたのか」を深掘りすることで、改善すべきポイントや潜在ニーズを把握できる場合もあります。

 

継続的なモニタリングと活用

顧客満足度は一度調べれば完了、というものではありません。キャンペーンや新サービス導入後など、定期的に同じ指標を追うことでトレンドが見えてきます。また、スコアを社内共有し、改善施策に結びつける“仕組み”をつくることが不可欠です。施策を打ったあとに再び調査し、効果を検証して次のアクションに活かす――このサイクルの中でこそ、調査データは生きた経営資源となるでしょう。

 


 

顧客満足度調査が「甘口評価」になりがちな背景には、回答者心理や設計上の細かな落とし穴が潜んでいます。数字が高いからといって安心せず、「本音を拾えているのか?」という視点で調査設計を再考することが重要です。そのためには、調査対象の選定、対象者の都合に関する配慮、質問の作り方、モード選択、定性調査の併用など、総合的なアプローチが欠かせません。

 

当社(株式会社アダムスコミュニケーション)では、企業が顧客のリアルな声を把握し、確かなエビデンスにもとづいてマーケティング戦略を立案できるよう、調査設計から分析・施策提案まで幅広くサポートしています。もし「うちの顧客満足度は本当に正しく測れているのだろうか?」とお悩みでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。顧客接点をより強固にし、ビジネスを一段上のステージへ引き上げるお手伝いをさせていただきます。

 

アダムスコミュニケーションでは、お客様のご要望に応じた各種調査メニューをご用意しています。詳細は調査メニューでご確認ください。